弥生の本屋

小石川弥生のブログ小説です。

ブログ小説「記憶」正体と回想 17話

 そう......僕は......何度も何年も何百年、何千年......と同じ事を繰り返し この世界に戻ってきた......死神として......

回想

死の匂いがする この村を数千年前に 降り立つ......

この日、死神として初めて 生死ある者の選別を任され  躊躇なく事を運ぶ予定だったが......

 ある儀式が始まり......一人の少女が 矢倉で舞を披露しているのを 暫し眺めていた......

 笛の音が 舞と共鳴しあい 目が離せず 気がつけば 時が過ぎて

 ここに降り立った 理由を忘れてしまっていた......

 僕は 自然と 少女の元へ引き寄せられ......少女の顔を......拝見

 矢倉から降りる少女の顔には 死相が......

 近々 この少女は 僕が連れてゆくのだと 分かった...... 

 少女の事は 気になるが もう一人 気になる者が......

 それ以外の者は 死を誘う者たちばかりだ......

 生命が朽ちる時まで 暫く観察することにした。

 僕が気になる者と言った者は

皆に 圭吾と呼ばれ 少女にまとわりつく 生に導く者

 そして......この者は 少女に生きてほしいと願う者だった......

 しかし、それは無理だろう

 少女には 生きる意志が まるでない......それに 少女の周りは

死を誘う者たちで 逃れられない

 

 二人の行方は......この時の僕は

死神として ただ......生命の朽ちる時を待ち 人間観察をしていたつもりだった......

 

 

 

ブログ小説「記憶」罪深き者たち16話

 

カナエの顔が......霞む......

「圭吾さん!圭吾さん」

 何度も...何度も 聞こえる 僕を呼ぶ カナエの声が......

 遠ざかるはずの カナエの声が...何故か ちゃんと聞こえてくる???

 失いかけていたはずの意識は 次第にハッキリと 何故か......痛みもなく

血も止まっていた......いったい何が......どうなっているのか......

 急に我に返った僕は 集落の人たちは......左右前後 見渡し...

 その光景に 戸惑いと 起きている状況に 頭をフル回転させた。

 

 僕の周りを 囲むように ひれ伏す集落の人たち 僕の横には 泣きながら 僕の名前を呼ぶカナエ.....

 

 僕が立ち上がろうとすると 集落の人たちは 何かに怯えているのか 僕に 

「申し訳ありません」

と、何度も謝り

 僕が 声を出そうとすると...

ひれ伏せながら 両手で拝み

「許してください」

と、命乞いをする姿が....滑稽で哀れだった......人間は 愚かで罪深い存在......

 

そして....僕は....記憶が戻った......

 

 

 

 

 

ブログ小説「記憶」絶体絶命15話

 これから どうするか......集落に戻ると また この状況が繰り返される 気がしてならない......なら...どうする......そんな事を考えていると

 

 遠くの方から ガヤガヤと こちらに向かってくる 何か分からないが だんだんと 音が......声が近づいてくるのが 分かる......

「カナエ!」

 僕は 急いで カナエの手を引き茂みに隠れた......

だんだんと近づく 音は人の歩く音 カチャカチャと何かが当たる音 声は だんだんハッキリと分かるように......そして その声は

「泰三!カナエは本当に逃げたのか?!もしそうなら この村はどうなるとおもうちょる

泰三、お前に任せんかったら こんな事態にならんかったが......はよー!皆の衆 カナエを探さにゃならんで!」

「おー!!」

 泰三は キョロキョロと 周りを見ながら 集落の人たちを 先導していた......

 僕とカナエは 茂みに 身を潜め

集落の人たちが 通り過ぎるのを待つ

 微かに震える カナエ手から 今の心境が読み取れた......

その時だった!

 誰が 叫んぶ!

「おったぞー!」

 泰三たちに 気を取られ 後ろに回られた事に 気がつかなかった

一斉に 振り返る集落の人たち 

 僕はカナエ手を強く握り

「カナエ!一緒に走るんだ!」

 カナエの手は 絶対に離すものか

茂みを抜け 走って くぐり抜け 走って 走って 振り切って 駆け抜けた......

血液が物凄い早さで 僕の心臓を駆け巡る それと共に 太鼓を叩くかのように 心臓は 大きく振動し

 痛みとして 僕を襲う......

 

 バキューン!!!

 

ぼんやりと あれ......雷が落ちたのか......急に 足が......動かない...あれ......カナエ......カナエの悲鳴が......なんで......カナエが泣いて

膝が......抜けた......僕の腹から血が......あれ......

 僕......撃たれたのか......血のついた手を見ながら 撃たれたと知った......カナエの どうしようもなく泣き叫ぶ顔が......薄れゆく 意識と......共に......僕の脳裏に深く焼きついた......

 

 

 

 

 

 

 

ブログ小説「記憶」繰り返す14話

カナエは ゆっくりと僕に歩みより

「でもね....当たり前だと ずっと思ってたのに...生きたいと思う 感情が 溢れるの...圭吾さんが 何度も...何度も......」

カナエは 言葉に詰まりながらも

 僕に 伝えたい何かを 一生懸命話そうとしてくれた。

「ごめんなさい......本当に...私のせいで......圭吾さんは......」

 カナエの 言葉の意味が まだ僕には 理解できないけど もしかしたら 僕の記憶がない事が 自分のせいだと 思っているのか......

「カナエ 僕は 大丈夫だから」

 そう伝えると...

 カナエは また話し始めた......

「あの日から ずっと時が 繰り返し  今日が死ぬ日だと 何度も 何度も 昨日のように感じて......この先に あの日のように......

圭吾さんが......死んでしまう事が分かっていても 何もできなく...

気がつけば また......繰り返して

 私が死ぬ運命なのに 圭吾さんが死んでしまう......今 ここにいる圭吾さんが 本当に圭吾さんなのか......分からなくなったり......

でも......やっぱり 圭吾さんだと...この先の 未来がないのに 圭吾さんは 何度も 何年もかけて

繰り返し 私の前に 現れて 何度も 何年も 助けてくれて......

 私が いなければ......圭吾さんは

死なないはず......どうして...こんな事が 起きているのか......分からない......どうしたら、この繰り返される 時を普通に 戻せるのか

 この事を 何度も 圭吾さんに 言おうと 思ったけど 言えなくて

ごめんなさい......いつから 始まったのか いつからの自分の記憶なのか 私もはっきりとは 分からなくて......ただ...頭の中に この状況を 何度も 繰り返していると言う事だけが 何故か 記憶されてるの......」

 何だろう......この感じは......

カナエの話を聞いて 僕が感じているのは...僕は 死んだんじゃなくて......何か 忘れているような...気がしてて......悲しいとか 怖いとか 辛いとか そんな感情にはならなかった......

 繰り返す事には きっと意味があって 僕が......この世界に戻った...カナエが言う 何度も ここに戻るには 意味があるはずで これは...

絶望ではなくて きっと この先に繋がるはずの 一歩じゃないか...そう感じていた......だから...

「カナエ......話してくれて 

ありがとう......僕も 分からないけど カナエが言う この先 僕が死ぬは 多分 僕は 死んだんじゃなくて 違う世界に ワープしたんじゃないかと思う...僕は

この世界に 戻る前は 20歳まで違う世界で 生きてて 子供の頃からここにくるまでの 記憶は しっかりと 僕に刻まれて 残っているだ。

 だから...ここに 僕が戻った事には 必ず意味があって  変えられない未来はないはず...

 だから、少しだけ待ってて きっと この状況を 変える何かがあるはずだから......だから それまで一緒にいてほしい......いいかな」

 

 カナエは ゆっくりとうなずいた...

 

 

 

 

 

 

 

ブログ小説「記憶」感情13話

 カナエの寝顔を 見ながら これから どうするべきか......考えていた......集落に カナエを 送る事は もう......あり得ない

 だからと言って......カナエは どうしたいのか......集落に戻ると 言われても......

 そんな事を 考えてるうちに 眠りについてしまった......

 

 翌朝の 目覚めは 鳥のなく声から 始まり 気分は 半分リセットされた......ふと、カナエを見ると姿がなく 慌てて飛び起きたが 

カナエは 川で顔を 洗ってた......

 

 胸をなでおろし カナエに声をかける

「カナエ...」

 カナエの顔は 冷やした おかげか 腫れは引いて......僕を見ると

 「もう 大丈夫だから」

そう言って 笑顔を見せてくれた。

少し 安心はするけど あの状況はカナエにとって かなりショックじゃないかと......だから...

「カナエ......このまま 僕と...」

言いかけた時 カナエは

「何かを 決める前に 圭吾さんに話さないと いけない事があるの

私の話を 聞いて 圭吾さんが どうするか 決めてほしい......」

 

 カナエの表情から 緊張のオーラが 流れ......僕は 少し戸惑ったがカナエの話を 聞く事に......

 

 川のほとりで カナエは 話し始めた。

 

「今から 話す事は 真実で 圭吾さんは 忘れてしまっているけど......私は......生贄になる為に

この世に 生まれてきたの......

泰三さんも 集落の人たちも そう思っている......昔から 決められている事......私も......それが宿命だと思ってた......だから 感情と言う概念はなく ただ、生贄になる日まで、生かされている......

 

僕の涙は ゆっくりと 頬を流れおちた......

 

込み上げる 何かが 喉に痛みとして 残され 

 

 涙は 留まることを 忘れ......僕を負の感情へと 突き落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブログ小説「記憶」推測 12話

 意識を失った カナエの髪を 撫でた事で 僕の頭の中で 記憶の映像が流れ......そして ある疑問が......

 それは......僕が見た 映像は僕を見ている映像で......初めは 僕の記憶だと思ったが よくよく考えると もし、僕が知ってる 幽体離脱なら 見られる側の僕は 意識がないはず......

 動いている 僕を見ることはできない......それなのに 僕は 連れていかれる カナエを必死に 追いかけている......

 僕は 僕で 僕ではない......頭が痛い......

 それに......あの時 怒りで我を 忘れていたかも しれないけど......

 カナエを 助ける事が 何故できたのか......

 難しい事を 考えるだけで 体が暑く 

 僕は 川の中へ 頭から突っ込んだ。

 

冷えた川の水は 気持ちよく 僕の思考を冷静にさせる

 深く考え過ぎだと 言い聞かせ... 

 

カナエを見ると

気がついたのか 起き上がろうとしていた......

 慌てて カナエの元へ

 

「カナエ......まだ、痛いだろう...起き上がらなくてもいいから...

もう少し、休んでな...」

 カナエは 申し訳なさそうに

「圭吾さん......ごめんなさい....」

 「分かったから 横になって......口の中も 切れてるから まだ...無理して 話さなくていいから....」

 

 僕の言葉に 促され カナエは 何かを 伝えようとしたのを止め 

 眠りについた......

 この時は まだ......何も分かってはいなかった......もっと深い先にある事実を......

 

 

 

ブログ小説「記憶」ループ11話

泰三は 壊れたように 覇気も無くなり ブツブツと 悪くないと 呪文のように 繰り返す...... 泰三を 置き去りにし......

僕は カナエを抱え この場所を 離れた......

 早く手当てをしなければ......どこか......休める 場所を......

 日が落ち始め 辺りもだんだんと見えづらく どこかないか 必死に探した......

 すると 丁度小さな川が流れ 

カナエを 横にできる 場所を見つけた......そっと カナエを寝かせ

 手首に巻いた 布を取り 川へ......

川で濡らした 布を絞り カナエの顔についた血を 拭き取る......

 

何回か繰り返し 晴れた目を 冷すために 血のついた布を 川で洗い カナエの 目の上にかけて 腫れが 引く事を願った......

 

 どうして......こんな事が......

カナエが こんな目に 合うなんて......カナエの髪を そっと撫でる......その瞬間 僕の頭の中に 目まぐるしく 映像が......流れ始めた......

 

 頭の中に 映る光景は......

 カナエが 誰かに 連れていかれる場面で それを......僕が必死に追いかけて......追いかけて 

「カナエを離せ!」

 弓を引く僕の姿が......頭の中の映像は ここで 終わった......

 

これは......僕の記憶......なのか...

 

 この時 僕は...この現象は 繰り返されているんだと 気づいた......